本を読んでみました

シャンプーのにおい

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本を読んでみました。


『匂いの人類学 鼻は知っている』京大名誉教授が絶賛という一冊。そんな言葉にプライミングされたわけではないが、素晴らしく興味深い本だと思います。
 内容は、シャンプーや香水など、どの香りがどうこういった効果があるといった説明等ではなく、主に香りの心理学的な話や鼻の能力の話、香りと実生活の結びつきの試行錯誤の歴史といったものでした。匂いの構造には触れていないため、振動説云々とか物理的な話は出てこない。化学的な話は匂いが分子という都合上登場せざるを得ないが。。。
 この本では、香りそのもの以上に先入観や偏見といった言わばスピンが香りの判断に影響を及ぼすという主張が大変興味深い点の1つ。物質に香りがあると暗示して水から香りを知覚させたスロッションの実験や、匂いがすると思うだけで嗅覚のスイッチが入ることを示したオマホニーの実験、造花のバラで失神した事例を紹介して脳が鼻に優ることを説明している。人間の心理的要素が生み出す認知が知覚を支配する力について脅威を感じざるをえない。匂いに先入観や思い込みを持っていることで知覚や生理反応に変化をもたらす情報バイアスの力に度肝を抜かれたように思う。
 2つ目の興味深い点は生物(動植物)における香りを用いた化学戦略を紹介している点。動物の香りの話については紹介している匂いの本をほとんど見たことがないので、それを紹介しているだけでも有用かもしれない。オモンシロチョウの持つ香りが抗催淫剤として機能すると同時にタマゴヤドリコバチに寄生されるといったことや、オレンジの花と果実は香りの媒介者・散布者を魅了するものの葉に含まれる揮発性の方向族化合物が草食動物に対して自衛になるといった動植物の香りを用いた生存戦略の話は驚きと同時に自然世界の連鎖の美しさに圧倒されたというか魅せられた感覚に陥った。加えて、紙面や映像で見るのではなく、実際に触れることの重要さを間接的に感じさせられた。
 3つ目は人間の持つ鼻の能力はそれほど低くないということを主張している点。人も犬と同等の嗅覚能力を持っていて、匂いの追跡ができるんだとか。手を触れたものだけを嗅ぎ分けることも可能であるし、恋人の着ていた衣類の匂い選び出すことや自分の赤ん坊を匂いで判断することも可能とのこと。また、嗅覚は一般的に女性の方が高く、それは脳の構造によるらしい(女性の方が匂いを記憶する能力が高いため)。ただ、鼻の能力は重度の感染症や頭部の打撃によって失いかねないので気をつけなければならないそうです(回復率は感染症で約3割、頭部打撃で約1割。安易にヘディングできませんねw)。

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